花をいけていると時々、どうしても使いたくなる草木に出会うことがあります。
今回の主役の花材は、やむなく切ることとなってしまったクルミの木。私が渡独した当時にすでに庭にあり、過去30余年鎮座した胡桃の木です。このクルミのおかけで爽やかな夏を何度庭で過ごすことができたか…しかし残念ながらもうその姿はありません。
そのクルミの木を伐採した際に、枝を何本か残して置きました。相手(合わせる花)が見つかるまでの間ですが、愛おしいクルミをなんとかいけばなで復活させたい。そんな思いが込み上げてきました。
苔むした胡桃の枝に合う花として、やはり庭からフジウツギの花を。小さい花が集まって細長い姿が特徴。遠目からだと塊に見えてしまって、かなり主張しているかのようにも見えるお花です。
さて、主役の胡桃の枝は苔むしているので、さらに形の面白さを出すように付き枝や葉を整理し、瓶の左側前方へ挿します。実の付いた枝が上手い具合に上向きになってくれました。主役と対比するかのように右側へはあえて葉のある枝を。さらに瓶とのつなぎとして、主役の枝には下枝として実のある枝を挿します。
フジウツギは花の曲がりをいかして、まず中央に1本、その前方へ1本、そして主役の枝へ近いところへ挿し、全部で3本のみ使用。ここで花を入れ過ぎてしまうと、胡桃の枝がかすんでしまうので、注意が必要です。
枝、実、葉、花との全体のバランスを見ると、これ以上は足せない、引けないがお分かり頂けますでしょうか。
そして力強かったクルミの木をいけばなで再生できたでしょうか。
目次
いけばな
花:クルミ、フジウツギ
器:投入花器
2015年7月